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ホタルが棲む水環境の再生

南相馬市小高区川房地区の水路は、二級河川の川房川を除き、人の手で水量を管理しています。村民は古来から川房川に小さな堰をつくり、そこから集落内に水を流してきました。2021年、利用する農家もなく水がただ流れる農業用水路にゲンジボタルとヘイケボタルが復活しているのを確認しました。2016年7月に避難指示が解除されてから、上流エリアに帰還した堰守のじいちゃんが土砂で埋まった水路を掘り上げて、集落内に水を流した結果、数年を経て、土の用水路の3か所でホタルが戻ったのです。

土の水路3地点でホタル発生

上のマップにあるオレンジ丸の3地点でホタルが戻って来ました。北から順にA地点ではゲンジが100匹ほど大発生し(下写真)、B地点では主にヘイケが発生(6月のピーク時で20匹ほど)、C地点では少ないながらゲンジが発生しました。いずれも土の水路が残っている場所です。

A地点で2021年6月13日、ゲンジボタルが飛翔(20秒露出)

ホタルの飼育

ホタルの生態を知り、環境づくりに役立てるため、飼育をしました。採卵し、孵化した幼虫にカワニナの稚貝を与えて育てました。

ホタルの卵

スポンジに産み付けられた卵がもうすぐ孵化
動画再生

ホタル幼虫は12月はじめまでカワニナを食べて成長し終齢に達したようです。その後は水温が下がったため3月下旬までほぼ何も食べず冬眠したようでした。2022年4月、暖かくなって再び餌を食べはじめたので、上陸も近いと思い、4月下旬にB地点に放流しました。6月ごろには成虫になると思われます。

カワニナも飼育しました。ポンプで空気をブクブクと送り込み、水中内ポンプで渦巻き状に水流をつくり、別の水中内ポンプで水を汲み上げて濾過しました。週一で半分ほど水替えし、エサは鯉の餌とプレコの餌を与えました。アパートのベランダに置いた衣装ケースで1年飼育できましたが、水質を維持するのがとても大変で、自然の中に生息環境をつくる方が楽だと思いました。

通販一匹300円で買ったヘイケボタルの幼虫

昨年5月にはヘイケボタルの幼虫を1匹300円で50匹買って成虫まで育てました。餌にタニシを与え、傍らに上陸用の土を用意すると上陸して蛹になり羽化するのですが、成長度合いによってポツリポツリと羽化し、一斉に羽化しないので、お世話が長期化します。交尾相手も見つけられません。なので翌季に自前で育てた幼虫は大きくなってから自然の中に放つことにしました。

ホタルが発生する条件

ホタルが発生するにはカワニナやタニシなどが多数発生することが条件になります。どんな環境かというと

  • 流れの緩い小川
  • 流水量の激変がない。水が枯れたり大水が発生したりしない
  • 泥や落ち葉や草が豊か
  • ある程度の日当たり(光がないと草木や生き物や底質が豊かにならない)
  • ホタルの幼虫が上陸し土まゆをつくって蛹になれる土壌が水路わきにある

近年、この集落でも水路はU字溝だらけになり、土の水路は上述のマップでピンクに塗られた部分だけです。これらはすべて人がつくった用水路なので、その水量をできるだけ一定に保つため、水路の維持管理が必要になります。川房集落は、震災後1年間完全に人が消え、出入りが許されても宿泊が容認されるまでさらに4年を経た集落だったので、水路を復旧させるのは結構大変でした。

集落の水環境の再生

堰を復旧しました

集落内の水は、川房川本流に設けられた堰から引かれています。水の維持のためには水路周りの草を刈り、台風や大雨のたびに土砂で埋まる水路を掃除しなければなりません。震災後の数年間、水路は土砂で埋まり、堰の水は途絶えましたが、代々この堰を守っている江井家のじいちゃんが数年前から堰の復旧作業をして、誰も使わない水を集落に流していました。その結果、数年を経てカワニナなどの生き物が集落に戻り、カワニナを餌にするホタルも発生しました。

堰守のじいちゃんが川房川の堰から引く水路の草を刈り土砂を掘り上げました

水路を掘り起こしました

笹薮と泥に埋まった水路を掘って水が流れるようにしました
この水路には10年ぶりに水が流れました。

泥と石と草木で埋まった小川(上の左)を復活(右)させました。後ろに見える鉄塔と木で同じ場所とわかります。これで数年後には上流B地点の生き物、カワニナ、ホタルがここまで生息範囲を広げてくれると思います。

土の水路を掘り直して水を流しました
土の水路が上下二段になりました

藪を刈って日に照らし

笹薮に覆われ見えなくなった水路(上左の写真)を草刈りして日が当たるようにし(上右の写真)、また、水量を管理して常時水が流れるようにしました。2-3年後、ホタルが舞うことを期待しています。

湧水池と小川を復活させました

2021年、泥で埋まり完全にジャングルとなって30年以上経つ湧水池を掘り起こして湧水を復活させ(上の左)、その下流の小川を掘り起こして湧水を流しました(上の中と右)。この湧水池は「すず」(清水の意味)と呼ばれ、昔は近所の奥様方が米とぎにきて「すず端会議」をしてたとか。下流の小川ではウナギがとれたそうです。

湧水復活1年後の2022年にはオタマジャクシやヤゴやゲンゴロウなどが見られました。2022年、小川にカワニナを放流しました。カワニナやホタルが定着するかどうか、経過を観察していきます。

堰を改良し維持の負担を軽くしました

上江の堰

堰の役割は3つ。これにより用水路の水量が一定に保たれるようになります。

  1. 平常時に適量を水路に取り入れる
  2. 洪水時に過度の流入を防ぐ
  3. 洪水が終わったら、流入水量を制御しながら、入り込んだ泥や草木や石を掘り上げ、それらを処分する

これを堰守のじいちゃんが、誰からも頼まれていないのに、一人で無報酬でやってくださってました。水路右横に見える土の山脈はじいちゃんが掘り上げた泥です。この重労働を軽くするため堰を改良しました。

洪水吐

堰の洪水吐(こうずいばき=洪水時に多すぎる水を本流に吐き戻す)のコンクリは壊れている上、水量を制御する木の板を80近いじいちゃんが動かすことは無理、というか危険でした。また、下流で泥などを掘り上げるとき、ここで水位を下げないと水の中から泥を掘り上げる作業が大変でした。

改修後の洪水吐

そこで、洪水吐のコンクリを修繕した上で、鉄製の制御板をつけました。水路に泥がたまったときにハンドルを回して制御板を上げると泥を水と一緒に本流に流し戻すことができます。また、ここで水位を下げれば下流での掘り上げも楽になります。洪水時には水が制御板の上を越えて本流に戻るので水路下流の水量が抑えられます。

洪水抑止壁

洪水吐の上流側には、洪水時に流入量を制御し流木などが入り込まないようにコンクリの壁を設けました。

普段はこの写真の程度の水量でも2019年の台風19号のときは10mもある流木が流れ下りました。そんな激しい川の変化に耐えて先輩方は生活用水を確保し田畑を維持してきたのですね。

写真(上)は堰のある集落上流エリアです。正面は堰守のじいちゃんの家です。じいちゃんが守る水路の水は、田畑を潤し、防火用水に貯水されて火事を消し、各戸の前に設けられた洗い場で野菜などを洗う水になりました。集落の人口は230人から30人に減り、水を使う人もほとんどいません。そんな環境でも水を維持し、集落を守り、農業と農村を再興する道をさぐっています。

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