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震災後初めての田植えと稲刈り

震災後10年で集落で初めての田植え

南相馬市小高区川房の集落内に金花山という公園がある。公園の西に広がる山村風景は春は特に美しい。この写真の中央に見える小さな田んぼに震災後10年を経過して集落で初めて田植えを行った。

同じ公園から東を見るとまだ除染土の仮置き場が農地を占拠している。除染土そのものは搬出されたが、除染土を覆っていた、汚染されていない砂の袋の行き場が決まらず、居座っている。

田植えをした場所は空間線量が0.5μSvと高く、土は12000Bq/kgの放射性セシウムを含んでいる。それでも土壌がカリウムを十分に保持していれば、稲を倒して土にまみれたりしないかぎり、セシウムはコメには移行しないと聞く。自分たちでこれを確かめようと考えている。

田植えを行ったのは、志賀信夫さん。数年前に福島県立医大坪倉教授の調査で、年間追加被ばく線量が4mSvになると推定され、相馬双葉地域の調査者全体の中でダントツでトップとなった人だ。志賀家は川房に定住して600年になる。代々集落を率いてきた家だから、荒れた集落を放っておけない。信夫さんは、集落から出て行った人の土地であっても「昔世話になったから草刈でお返しする」と言って日々草刈機をぶん回すので、その被ばく線量は地域一番に多くなった。(2021/7/21)

稲刈り

2021年10月10日、この集落では震災後初の稲刈り。直前に放射性物質を計測してもらったが、不検出だったので、無事稲刈りとなった。

空にはトンボが数百匹。稲刈りで驚いて飛び上がる虫を狙っているのだろう。稲刈りが終わったら散っていった。

この集落の環境で植物が放射性セシウムを吸収する度合いについてはほぼ決まっている。野生のキノコとコシアブラは抜群に吸収(食用基準超え)するのであと十年は食えない。タケノコもかなり吸収(食用基準前後)する。柑橘類、銀杏、豆類は少し吸収する(食用基準以下)。根菜、葉野菜、米は問題がない。この土には12000Bq/kgとおそらく南相馬市の農地で一番の放射性セシウムを含むが、米には不検出だった。土のカリウムが十分にあれば、セシウムは米には移らない。最も汚染された田でセシウム不検出だったので、集落のどの田んぼでも稲作は問題なくできる。それは実証できた。

それでもこの集落では稲作を再開しようという動きはいまのところない。高齢化して若い人がいないこと、米価が安いこと、山沿いで田んぼ一枚の面積が小さいため生産効率が悪いことが原因だ。放射能の問題がなくても、農業の担い手がいなければ再開は望めない。