霧箱で放射線の飛跡を見る

霧箱で放射線の飛跡を見る

冒頭の画像はラド社の霧箱です。霧箱を使うとアルファ線やベータ線の飛跡を見ることができます。ガンマ線は霧箱では見えませんが、ガンマ線が弾き飛ばした空気中の電子の飛跡(ベータ線と同じような飛跡)は見えます。ご要望あれば福島見る知る学ぶツアーで霧箱を見ることができます。

上の写真にある色々な材料を霧箱に入れてみます。霧箱に置くものが底面に接する面積が広いと冷却能力が下がるので、なるべく霧箱の底面に接しないようにします。ランタン・マントルは注射器に入れておき、その中の空気だけをピュっと霧箱の中に入れます。

まずは、何も入れずに放射線量が普通レベルの場所で撮影した動画です。曲がった線はベータ線、まっすぐにすっと長く跡を引くのは宇宙線です。

次はウラン鉱石。太い線はアルファ線です。アルファ線は陽子2個と中性子2個からなるヘリウム原子核です。大きなエネルギーを持っていますが、粒子が大きいため前に進めず、太く短い線になります。

次はウランを混ぜたガラスでできているビーズです。アルファ線のほかにベータ線も出ています。ベータ線は原子核から出てきた電子です。アルファ線よりエネルギーと粒子が小さいため、空気中の分子にぶつかって曲がりながら進みます。

次はモナザイト(モナズ石)。ウランとトリウムを含むので、その崩壊によりアルファ線やベータ線を出します。

次はラジウムボール。この霧箱を買ったときに付属していました。モナザイトを混ぜたものらしいです。ララジウムボールの本来の用途は、玉川温泉や三朝温泉などのようなラジウム温泉などの効果を再現するもののようです。

次はアメリシウム。アルファ線を出します。昔は煙探知器に使われていました。今も海外では使われているようです。

次は、トリウムを含むランタンマントルの周囲の空気を注入したものです。トリウム232から発生したラドン(トロンともいう)がアルファ崩壊してポロニウムになり、さらに一瞬で鉛212に崩壊するので、アルファ線が1点から2方向に飛ぶ様子が見られます。

トリウムとかラドンって何?

みなさん、「水兵リーベ僕の船」って習いましたね。あれは陽子の数順に元素を並べたものです。

水兵の水、つまり水素は陽子1個、兵のヘリウムは陽子2個、リのリチウムは陽子3個と続くのですが、実はこの同じ元素の中にも中性子数の異なる物質があります。たとえば、水素の中に三種類があって、陽子1個だけで中性子を持たない普通の水素、陽子1個と中性子を1個持つ重水素、陽子1個と中性子2個持つ三重水素があります。同様に他の元素も中性子の数で種類が分かれます。

すべての元素の陽子数と中性子数をもとに図表にすると次のようになります。この小さな四角一つひとつを核種といいます。陽子1つだけの水素は左下の黒い四角、陽子1個と中性子1個の重水素はその右隣、三重水素はその右隣に並んでいます。陽子92個+中性子146個をあわせて238になるウラン238は右上の方に位置づけられます。

核図表の核種のうち黒く塗られた核種は安定していて変化しません。陽子と中性子の数のバランスが取れているのです。他の核種は中性子や陽子が多すぎて不安定のため、安定した黒い核種に向けてどんどん変化して行きます。変化の仕方に複数あり、主なものは、原子核から陽子や中性子や電子を放出する方法です。この変化を崩壊または壊変といいます。すべての不安定な核種は電子や陽子や中性子を放出しながら黒い安定核種に向かって近づいていくのです。

実は、この崩壊のときに放出される陽子・中性子、電子が放射線です。

不安定で崩壊する核種を放射性核種といいます。上の水素でいえば三重水素が放射性、他の2つは安定核種です。

放射性核種が陽子や中性子を放り出すとき、なぜか陽子2個と中性子2個の組み合わせ(アルファ粒子)と決まっています。これがアルファ線で、その崩壊をアルファ崩壊と言います。アルファ粒子はヘリウム原子核と同じで、自然界で電子を獲得してヘリウムになります。電子を放出するときは1個だけ出します。これをベータ粒子、ベータ線といい、この変化の仕方をベータ崩壊と呼びます。

アルファ崩壊やベータ崩壊するとき、多くの場合ガンマ線を出します。ガンマ線も放射線ですが、電磁波であって粒子ではなく、放出しても陽子中性子の増減はなく、したがって核図表の位置は変わりません。

地球が生まれてから、不安定な核種はどんどん崩壊し、安定な核種になりました。ある放射性核種が崩壊で半分になる時間を半減期といい、崩壊の起こりやすさを表します。半減期の短い核種は自然界から消え去り、いま残っているのは主に半減期の長い放射性核種です。その崩壊が自然環境中の放射線を作り出しています。

たとえば上の核図表のうち、ウラン238は陽子と中性子の数が多すぎて不安定なので、安定した鉛になるまで、次のようにアルファ崩壊、ベータ崩壊を重ねて放射線を出します。しかも、この一連の崩壊の大元であるウラン238の半減期は45億年なので、ウラン系列の核種は地球上からなくなることがありません。

トリウム232(半減期は140億年!)も安定した鉛になるまで連続して崩壊します。その過程でラジウム、ラドン(トロン)、ポロニウムなどに変化(崩壊、壊変)し、そのたびに放射線を出します。上の動画、「トリウム由来のラドンの崩壊」で見られるアルファ線は、下図の220Rnラドン(半減期56秒)と216Poポロニウム(半減期0.145秒)が連続して崩壊するときに出るものです。

ウラン、トリウム、ラジウムは固体ですが、ラドンは気体です。このため、人が吸引しやすく、吸引後にラドンの子孫であるポロニウムや鉛が固体となって体内にとどまり放射線を出すため、ラドンは自然環境からの被爆原因の半分を占めると言われています。

原発事故の汚染土とセシウム137

次は、放射能汚染土です。セシウム137のベータ線が見えます。横や後ろにあまり飛ばないのは、入れ物の塩ビでベータ線が止められているからです。

セシウム137は、原子炉内のウラン235が核分裂したときにできた片割れで、沸点が641度なので原発事故の際には気体になって環境に放出され、外に出て冷えてからは塵や土などと結合して地上に居座っています。半減期が30年なので事故から10年を経ても環境中に残っています。核図表上の位置は黒の安定核種の隣にあって、一度のベータ崩壊で安定したバリウム137になります。

霧箱でガンマ線の影響を見る

アルファ線とベータ線は粒子であって霧箱に飛跡を残しますが、ガンマ線は電磁波であって霧箱で飛跡を見ることはできません。しかし、ガンマ線が空気中の原子が持つ電子を弾き飛ばして、その電子が飛跡を残す様子を見ることができます。

下の動画は、トリウムを含むランタン・マントルを10枚ビンに詰めて霧箱に近づけたときの様子です。アルファ線やベータ線はビンから出られませんが、ガンマ線はビンを通り抜けるので、それが霧箱内の空気の電子を弾き飛ばして、飛跡が増えます。ベータ線の電子は原子核の中性子から出て来ますが、これは原子核の外側を回っている電子が弾き飛ばされたものです。

放射線の透過力

アルファ線は、エネルギーは大きいのですが陽子2個中性子2個と粒子が大きすぎて紙でも透過できません。ベータ線は、粒子が小さいので、アルファ線よりは透過力がありますが、薄いアルミでも遮蔽できます。ガンマ線は透過力が強く金属なども容易に透過します。

紙で放射線を止められるか、霧箱で見てみました。付箋紙1枚を切り取ってをモナザイトの前に立ててみました。アルファ線の多くが紙に止められて、紙の手前で霧が舞うのが見えます。

※ベータ線は紙を透過しているように見えますが、紙を透過したガンマ線が紙の向こう側の電子を弾いているかもしれないので、上の動画でベータ線の透過力を確認することはできません。

放射線の健康影響を少なくするには

アルファ線とベータ線は透過力が弱いのにエネルギーは強いので内部被ばくに注意する必要があります。外部被曝を気にする必要性はあまりありません。ガンマ線は透過力が強いので、遮蔽するより、線源から遠ざかるのが有効です。

福島見る知る学ぶツアーでは、ご要望に応じて放射線のお話をすることができます。

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